フォーカシング は、身体を使って自己の気づきを促し、心を癒していく、独特のプロセスです。
それはとても簡単で単純な方法です。
普段、【どんな風に感じているか】に注意を向けて、その感じ(フェルトセンス)と会話をします。その会話では、あなたはほとんど聞き役(傾聴的態度)に回ります。
フォーカシングでは、生活の中で起こっている事柄について、身体の内側で何かを感じるということから始めます。
例えば、苦手な相手と話をしなければならないときに感じる感覚は既に経験しているはずです。
この感覚について、フォーカシング(この技術)を知らなければ、その感覚に耳を傾けるとか、その感じがあなたに話しかけるようにし向けるようなことはしないでしょう。
つまり、フォーカシングを学ぶことで、今まで対話することのなかった身体からのメッセージと話をすることになります。
それは今まで蓄積された感情を解放する手がかりとなるものです。
身体の声を聞いて話をすることは自分を理解する重要な行為、そのものです。
ストレスにとらわれない、トラウマに支配されない生活を取り戻すことができるようになります。
フォーカシングは、身体に耳を傾けて、内なる自己があなたに伝えるメッセージを聞いてく独特のプロセスです。
身体の内側に蓄えられている知恵に敬意を払い、身体を通してあなたに語りかけてくる微妙なレベルの気づきを知るようになるプロセスです。
身体に耳を傾けることで、洞察、身体のほぐれ、生活の前向きさに変化が得られます。
あなたは自分のことをもっとわかるようになり、もっと快適に、そして、生活をもっと自分が望むように想像していくように行動していくことになるでしょう。
フォーカシング の歴史
フォーカシングの起源は、カール・ロジャーズが1950年代に組織したおおがかりな共同研究のプロジェクトにあります。
「分裂症患者へのカウンセリングの適用」がこの研究のテーマだったのですが、それは、ロジャーズにとって、「共感」「自己一致」「無条件の肯定的関心」という自分のカウンセリング理論を検証する場でもありました。
このとき、共同研究者の1人に加わったのが、哲学者のユージン・ジエンドリンであったのですが、彼は、どうもその共同研究の当初の目的が検証できそうにない、ということに直面します。カウンセラー側の態度(受容的か否かなど)と、カウンセリングが成功するかどうかには大きな相関関係が出なかったのです。
代わりに、ジエンドリンは、すごいことに気がついてしまいます。
「そのクライアントが、このカウンセリングで良くなるかどうかは、そのクライアントが最初の3回ぐらいまでの面接のときに、どんなしゃべりかたをしていたのかを聴けばわかってしまう」というのです。
どんなに、カウンセリングを重ねても良くなっていかない人というのがいて、そういう人の話や行動パターンというのは、怒ったり、落ち込んだりはしながらも、ついにはいつも同じところを回っているようになってしまう。そうじゃない人というのは、「あれっ、こういう風にいうと、なんか違うような感じがするぞ、ん~」というように、身体の実感と自分の言ったことを照らし合わせるようなしゃべり方をしている、というのです。
それでは、この自分の実感に照らし合わせる、ということを、訓練できる、教授できるような技術としてまとめられないかと、ジエンドリンは自分の研究をすすめて、1960年代の後半にフォーカシングという名前をつけた技法のマニュアルを発表したのです。